SKATEBOARD WORLD

INTERVIEW / Guest:Akio Honma

 
今回はコンテストやデモMC、ライター、HOW TO、翻訳、INSTANTのオーナー、 TV、パークの署名活動、、、書ききれないほど様々なシーンで活躍する 本間章郎さんへのインタビュー。

H:本間さん C:COMMOTION
MC
C:まず「MCって何する人?」という読者もいると思うのでMCという お仕事について簡単に説明していただけますか?

H:MCって簡単に言うと「司会」です。コンテストやデモで見ている人がより楽しめるように解説や紹介を話す役目になりますね。MCもスケートと同じで人によって実に色々なスタイルがあります。僕の場合は常に 意識しているのは「事実」を伝えること。伝えたいのはライダーのライディングや勢いに関してだけで、無理に盛り上げたりあおったりはしたくない。ライダー一人一人がそれぞれの ペースで自然に上がっていのを助けたいと思ってMCしてます。始めてのMCは確か6〜7年位前にGIRLやCHOCOLATEが来日したFINE CUPの時にMCをやる予定だったダイコンのヘルプでMCを変わったのがスタートです。MCをする為に特に勉強したりとか、MCになるために努力したことは 一回もありません。やり始めてから色々と失敗や反省を繰り返しているし、今もその途中だと思ってます。AJSAの横山事務局長には「イベントとは」という点ですっごく色々教えてもらいました。確かに人前でマイクで話すのは 恥ずかしいし、なかなか進んで出来ることではありません。 僕の場合は友人にヘルプを求められて初めて出来たことだし、普通の人は出来ればやりたくないでしょう。でもやり始めて判ったことは プロライダー達に「本間さんのMCが一番滑りやすい」って言ってもらえると嬉しい、って事。今は結構楽しんでやってます。

C:本間さんはAJSA他多くのコンテストでMCをされていますが、 最近のコンテストはどうですか?

H:僕がMCをやり始めてからそれほど時間がたってないし、コンテストシーンの 全てを知っているわけではありません。しかし、年を重ねるにつれ出場する面子が変わっていったり、年々新しい素晴らしいスケーター達に出会ったりと楽しいことはいっぱいあります。ただ最近のコンテストに限って言えば「祭り」の雰囲気が少なくなり「本気」モードの選手が増えてきたのを感じます。もちろん出場するということは 本気で滑るということですが、もうちょっと「スケート祭り」を楽しむ心の余裕があってもいいのに、って思うこともありますね。僕はスケートボード自体が「楽しい」から存在する物だと思っているし、「プロになりたい」とか「スケートで食っていきたい」とか本気モードの要因は多々あるとは思いますが、そんな人たちが目標にしている現在のトッププロたちはやはり「楽しい」から続けてきた結果だと思います。楽しさは人それぞれの価値観による物だと思いますが、皆で楽しめるコンテストやデモが理想ですよね。

C:面白いエピソードなどはありますか?

H:死ぬほどありますよ(笑)。まず個人的なことからいうと、以前はアマチュアとプロの予選決勝をすべて僕一人でMCをしていた時期がありました。プロ40人、アマチュア100人の予選・決勝をすべてMCする  と完全にノドが潰れる。コンテスト後、3〜4日声が出ないことなんてザラでしたね。一度コンテストの最中に突然声が出なくなり、のどから血が出そうな声でMCしたこともありました。結構ハードなんですよ。 また選手に関しては、コンテストは全国からいろんな奴が集まってくるので実に様々なライフスタイルを見れるということ。平気で時間を守らない奴は多いし、夜遊びが桁外れな奴も多いし、ヒッチハイクで九州から東北まで来る奴もいます(いました)。反対に妙にまじめな奴もいたりしてかなりウケます。あんなに酒飲む連中は初めて見ましたよ、スタッフも含めて(笑)。ライディングスタイルが人によって違うのと同じようにスケートに対する姿勢や考え方も様々で、淳之介やWURAとか妙にバイブが合う奴が居たり、毎年何回も会うのに口をきいたことも無い奴がいたり、マジで楽しい。コンテストやデモは僕にとっては「スケーター見本市」って感じですね。面白い出来事はホントに無数。数えたらキリが無い。笑いすぎてノドを潰すこともあるくらい(笑)。最近で言うとコンテストの結果発表の表彰式の時に、優勝者の発表をしても選手がなかなか出てこない。「どうしたのかな?」と思ったら「ビール買いに行っちゃった」、だって(笑)。ブラジルのマルシオなんだけど、完全に「ブラジル時間」で動いているの。でもそれもカッコイイよね。ウケました。あと、慶太の飛ばしっぷりも最高。コンテストでは緊張して寝れない位繊細でシャイな奴なのに、ハトに餌を撒くようにステッカー配ったり、コンテストの決勝で踊りながら滑ったり、いつも僕の予想を完全に裏切る怪しい行動がたまらない(笑)。また今年で言えば「孤高のストリートキング(ストリーキングじゃありません)」赤熊クマ吉が結構コンテストに出てること。それ自体がウケる。最高。

C:AJSAというとレベルが高くて自分には無理と諦めているアマライダーの話を良く聞きますが、実際どうでしょうか。

H:もうわかりますよね。「祭り」なんです。それぞれの意欲や決意を胸に秘め、自分の満足できるように楽しめればそれでいいじゃないですか。でも出来れば見ている人も楽しませて欲しい。独りよがりな満足はオナニーで終わっちゃうからテクニック云々の前に見ている人も楽しませることが出来る度量をまず身に付けて欲しいと思います。別に「笑わせる」って事じゃなくて真剣な人は「真剣さ」が伝わればライディングの出来に関わらず何を残したことになると思うし、笑いを取るのも自由です。自分を表現できればあとは人が決める事なのはどんな世界でも同じでしょ?。AJSAで言えばアマ予選は一本60秒でエントリー費は4000円です。時給にすると24万(わけわかりませんね、スイマセン)。交通費や宿泊費まで考えるとやっぱりそれだけのリスクを楽しめるくらいの度量がないと臆してしまう。それはわかります。でもコンテストに出るということは単にお金を払って点数をつけられるだけでは無いんです。地元で滑っているとたまに自分を見失うこともありますよね。自分がどれだけ出来るのか、自分を認めてくれる人はもっといるんじゃないか、何のために滑っているのか、とか。煮詰まっちゃう前に一回コンテストに出てみることをオススメしますよ。スケートのコミュニティーはすっごく広いんです。自分から飛び込めば絶対に何かの反応がある。それに気がついて欲しいのと、自分のスケートライフをさらにステップアップさせる為にはコンテストだけに関わらず、自らアクションを起こす必要があるんです。その一つのステップとしてコンテストがあってもいいんじゃないか、と思ってます。

C:これからコンテストに出場する人のために何かアドバイスいただけたらと思います。


H:僕自身は上手くないので偉そうなことは言えませんが、まずは楽しんで欲しいです。もちろんコンテストは採点する方も真剣です。トリックのレベルやルーティン構成、スタイルなどはモロに点数に出てきます。また難しい一つのトリックも良いですが失敗しない安定性も評価を受けることが出来ます。コンテストというと「凄いことしなきゃいけない」 と思われがちですが、狙いすぎると失敗する可能性も高いし、なにもメイク できないと気持ち的にも不満が残ります。順位などは意識せず自分の判断で自分をいかに表現できるのか、を意識するのがいいでしょうね。 また、コンテストのスキル的なもの以外に、その場にいる他のスケーターの練習もじっくり見ること。自分が好きなスタイルやライディングをする人には積極的に声でもかけてみて仲良くなっちゃう。そうすることで全国へのスケートネットワークが広がるし、次回のコンテストにも行ってみようかな、ってモチベーションが上がります。結構その「横のつながり」 って大事なんですよね。自分と同じように頑張っている連中が全国にいることを知って欲しいです。回を重ねるにしたがって緊張感も薄まるし、より楽しめるようになってきますよ。いきなり来ていきなり結果を出そうとしない方がいいかもしれませんね。確かに年々アマチュアのレベルも上がってます。高順位につけるのは本当に大変かもしれません。焦らずマイペースで楽しんで見てください。
ライダー
C:本間さんは多くのライダーを見ていると思いますが、最近注目の日本人選手は誰ですか?

H:常に注目しているのはINSTANT四天王(笑)の晋、クマ吉、慶太、ヒゴビシャス。それぞれがそれぞれに違った価値観で違った動きをしているので目が離せません。晋は今年はコンテストモードではなく、常に「自分越え」を狙っているし、クマ吉は相変わらずのマイペースですが、回りがほっておかないようになってきました。慶太は紆余曲折しながらも常に前向きに前進を続けてますし、ヒゴビシャスはかなりロックスター化してます(笑)。完全に違った4人がれぞれの方向に進んでいくのは見ていてホントに面白いし頼もしい。完全に惚れてます。また、他のライダーでは渡辺コタツ慎介。アマチュア時代からずっと見てますが奴のスケートマシーンぶりにはビビリます。会う度にスキルも精神力もレベルアップしていて、常にチェックしていたいスケーターですな。あとは「熱い」小澤正道。父親になってスケートもスケートライフもどんな風にステップアップしていくのか見逃せません。他には東西天才コンビの淳之介とWURA。スケーターとしてだけでなく、アーティストとしてリスペクトしているし、奴らの放つバイブはかなりメロー。スキルはもちろんの事、強靭な精神力には頭が下がります。他にも奈良のチョゲルや九州の西田潤、立本、赤松TAKESHIT、OWN-WADAや京都のアカシック  などなど数え切れないくらいいますよ。そうそう、また個人的に10年以上前から勝手に長島亘のファンクラブ会長です。会員は僕一人(笑)。OWNのダイコンとワタルは「好き」という以上に人間的魅力にヤラレてます。最後に今年30歳になる層がかなりヤバイ。すっごく沢山いるので誰がいるのか当てて見て下さい。15人以上わかったらかなりのスケーターオタクです(笑)。

C:ではアマライダーでは?

H:「アマチュア」とういう括りが適切かどうかは別にして、CHOICEの鈴木竜太がヤバイですね。長年アメリカで「人生設計」っていう自分越えに挑戦してますが、年に一度夏だけ帰国するんです。その時にタイミングがあったイベントやコンテストに顔を出すのですが、会えなかった分を取り返すくらいの勢いで毎年話し込む。スケートも超スタイリーでカッコイイ。大推薦です。またINSTANTのアマライダーの天沼・山口コンビもいい。そこに珍念ってアマライダーも加わると最高に良いテンションになります。全国的に見ると個人的な好みでは「スケートないとダメだね、あんた」って奴が好きですね。もう本能的に滑っちゃう、みたいな。さらにコンペティターかどうかは  別として元2-SKATEのタイチさんがどれだけスキルアップしたのかも気になるし、7大将の森本さんが滑っている姿を想像してニンマリしたりもします。あと数少ない同級生の杉山タクゾ琢哉。僕と同じ年で同じ二児の父、しかもバリスケ裸族。かなりイケ線。あ〜、今気が付いたんですが、僕はスケートマニアっていうか、スケーターマニアっぽいですね。ちょっと反省(しないよ)。

C:海外ではどうでしょうか?

H:よくわかんない(笑)。ま、あんまり人種や国籍は関係無いのですが、基本的 にはスケートボードはアメリカのスポーツなんですね。現在の資本主義がアメリカ中心のように、スケート業界もアメリカ中心なんです。でも僕は日本のフィルターを通して築かれた日本独自のスケートネットワークが大好きなんですね。何も無い荒地を耕して作物を作るたくましい開拓者のような、既存のシステムに頼らずに独自のネットワークを作り上げる技術者のような、「辺境の地・JAPAN」でスケートに選ばれた連中にホントに惚れちゃいます。NTOの徹とかOWNのダイコン、CHOICEのコヤ、FESNの森田、THREE'Sのマサ君とか知れば知るほどカッコイイ面子が揃ってますよ。ただ、海外の人でも過去にコミュニケーションをとれて良いバイブを感じたスケーターは純粋にリスペクトしてます。デーオンとかカリームとかコストン、マスカなどはその「余裕」っぷりがカッコイイ。また一緒にバカやって遊んだエリック・ドレッセンやピーター・スモリックも大好きです。またコミュニケーションはとれなくてもキャロルやハワードが放つ「オーラ」的な魅力も確かに存在すると思います。ライディングスタイルの好みで言えば、メイクした後に「気持ち良さそ〜!!」って感じのライダーは全部好きですよ。今は連載が終了となりましたが(残念!)Warp誌上において本気でスケートハウツーを書いていたこともあって、自分には出来ないトリックもイメージ出来るんです。それを完璧に体現してくれるようなライダーには「袖の下」を入れたくなります(笑)。オヤジっぽいですね。
グッズ
C:今注目のメーカーや商品は?

H:スケート業界は常に進化しています。ライダーの移籍や新製法など日進月歩なので、特に今注目しているというか、常に全てに注目してます。毎日見ていると結構変化が楽しんですよね(笑)。

C:異常(笑 とも思えるほどにグッズオタクな本間さんがこだわるセッティングとは?

H:今のセッティングは7.625〜7.75インチのデッキで、ノーズが丸め、コンケーブはきつすぎず弱すぎず、って感じのデッキが好きですね。細かいサイズの好みも無いことはありませんが、オタクっぽいので教えない(笑)。今はVALLELY SKATEBOARDのBOLTってコンケーブがキツメのモデルを使ってますが、SEEKのチームモデル7.75やFLIPのAPPLEYARD7.75も好きでした。今も色々と試していて、好きなデッキを何枚も続けて乗っていた時期もありますが、適当に色々乗ってみた方が「はずれ」もありますが面白い。日々勉強中です。トラックはずっとインディーを使っていて今は126を使ってます。一時ブッシュをカップワッシャーごとDLXの97Aに換えてましたが最近はそのまま使ってます。KCラバーも調子良いです。時々浮気してCUSTOMとかGKとかも使いましたよ。調子は確かにいいのですが何故かインディーに戻っちゃいます。気分的なもんですかね、多分。ウィールは幅が細めの53MM〜54MMで硬さは全く気にしない。結構見た目で選んでます。今はGOLDの54MMですが、その前に使っていたRECTA SLIMの53MMも良かったですね。ベアリングは今はFIZZ。ROOSルビーや NINJA7、CRESTなんかもいいと思いました。回転性能がいいのはもちろんのこと、丈夫な物がいいですよね。ちょっと前まではすっごくセッティングを気にしていましたが、最近はそれほど強い「こだわり」は無いんです。そのタイミングで乗っているデッキのセッティングを楽しむっていうか、乗り潰すまで乗らなくなったので慣れる前に換えちゃうことも多いんです。昔から考えると夢のような贅沢ですが、今の仕事をしていると使うのも仕事の内だとも思います。色々試すことが色々説明できることにつながるし、知らないことは言いたくないじゃないですか。ただスケート自体の楽しさは昔と全然変わりませんよ。セッティングとかは完全に主観なので、製品の性能がいいと乗りやすいって事じゃなく、自分がいいと思ったのは良いんですよ。だからショップで「おすすめは?」って聞かれても絶対に一個には絞れない。メーカーごとの違いを説明して最終的には全部お客さんに選んでもらう。今はデッキやパーツのスペックをホントに細かく気にする人も多いですが、こだわりつつもそれに縛られず大らかに楽しんで欲しいですね。

C:最近いいなと思ったビデオは?

H:ビデオは結構見てますよ。最近ではFLIPは絶対に外せませんね。いかれてます(笑)。個人的にはジョニー・ロッテンがストーリーテラーをしているのがウケる。ピストルズもP.I.Lも好きなバンドだったので 「年取ったなあ、でもカッコいいなあ」って郷愁感がたまらない。スケートと関係無いですね(笑)。
で、その他のビデオではTWSの「IN BROOM」。これは見ないとヤバイ。若手中心の構成ですが、「味」のあるライダーばかりで惚れ惚れします。あとそれほど新しくはないけれど、「DRIVE」や「manikmati」のDVDは作品として良い感じ。バレリーはもう政治家っぽいですね、または宗教家(笑)。TWSの「SIGHT UNSEEN」のDVDでのジョン・カーディエルも外せないです。DVDってボーナストラックがいっぱいあっていいですよ。あとTHREE'Sの「CMYK」も好き。クマ吉に撮影の進行具合とかスラムの状況などを聞きながら完成を楽しみにしていたので、完成作品は珍しくしっかり最後まで見ちゃいました。ビデオとして思い入れがあるものはそれほどないけれど、例えばLAKAIの 「BEWARE OF THE FLARE」でのMJとロブ・ウェルシュとか、BLINDの「VIDEO DAYS」のジェイソン・リーのパートとか、POWELLの「PUBLIC DOMEIN」の白黒ストリートパートのレイ・バービーとか、SANTACRUZの「SPEED FREAKS」のドレッセン、「STREET ON FIRE」のナタス、他にも忘れられないシーンはいっぱいありますね。みんな同じでしょ?昔からビデオは見てますが、飽きっぽいので一本全部を一気には見れないの(笑)。なんども見直してやっと気が付くところも多いし、マニアっぽい見方はしてないかもしれないけど、今も新しいビデオは見るようにしてますね。
ショップ
C:「将来ショップをやってみたい!」というスケーターの子の話をよく聞きます。本間さんがショップをやろうと思ったきっかけは?やってみて実際どうですか?

H:ちょっと長くなりますよ(笑)。まずスケートショップをやろうと思ったのはそれしか出来そうなことが無かったから。僕は大学を出て普通の企業に就職し、2年でドロップアウトしたんです。色々理由はありますが最終的には「馴染みたくない」って気持ちが強くなったからかなあ(単に逃げ出しただけかも)。で、しばらくフリーターでやってましたが、その時に就職活動から3年くらいずっと触ってもいなかったスケートボードを引っ張り出し、前に一緒に滑っていたローカル連中とまた滑り始めたんです。デッキなんて形が完全に変わっていたし、ウィールの大きさやトラックの幅とか全部変わっちゃってたんで、その友人たちがデッキやトラックをくれたりして当時のセッティングのデッキを作ってくれたんです。それがなんか嬉しかったんですね、マジで。僕は就職して毎日スーツ着て毎日頭下げてドンドン自分自身が変わっていくのが  自分でもわかるくらいだったのに、彼らは同じように就職したり、生活環境が  変わっているのに本質的なところは全く変わっていなかった。それがスケートボードの本質として僕には感じられ、以前よりスケートボードやスケートボードをする人が好きになったんです。それからフリーターで一生過ごすことを潔しとしなかったこともあり、貯金ゼロの状態からショップをやりたいと思ったんですね。さらに昔からのバイトの友人が出資して一緒にやろうと言ってくれて、それからはすぐにショップ作りの準備ですよ。なんとか店舗や取引先を捜し当て、また当時の代理店には昔一緒に滑った奴らが働いていてすごくスムーズに開店にこぎつけました。スケーターって一緒に滑った奴は忘れないし、すごく良くしてくれるんですよ。ホントに今でも感謝してます。なんとかショップは開いたものの、開店から4年くらいはまさに火の車(笑)。スケート屋は今も火の車は止まりませんが僕の勉強不足もあってホントに明日がわからない商売です。他のところは知らないけれど、仕事的には肉体的にも精神的にも大変ですよ。絶対に好きじゃないと出来ない仕事です。断言します。これからショップをやってみたい、って人はどんどんやってみればいいと思いますよ。ショップってやる人の個性がモロに出るからいろいろなスタイルのショップがありますよね。自分なりに自分のやり方でショップをすることは人生勉強にもなるし、やってみたいならどうすれば出来るのか考えてやってみるのもいいでしょう。僕のショップは成功しているのか失敗しているのもわからないし今でも好きだから続けているのでとても偉そうなことは言えませんが、苦労は多いですが楽しいですよ。ショップを始めた時に良く滑っていたローカルの中学生が今では22歳ですからね。よく潰れないでここまでやってきたもんです(笑)。INSTANTはローカル連中やINSTANTでお買い物をしてくれる全ての人に守ってもらいながらなんとかまだ営業してます。ホントに頭が上がりませんよ。最後に生意気ながら一言言わせてもらうとしたら「一人では何も出来ない」ってことですかね。どんなに力があってもどんなに素晴らしい計画があったとしても一人の力なんて大した事無いんですよね、多分。僕は仲間や家族やお客さんを始め、色々な人に支えられてなんとか仕事をさせてもらっていると今でも思ってます。
パーク
C:浦安パークの前進おめでとうございます。現在も署名活動をされている方が大勢いらっしゃいますが、成功例として良い参考になるのではないでしょうか。

H:ありがとうございます。でも完成したパークで実際に滑るまではどうなるのか判りません。僕らの活動の経緯はCOMMOTIONに「スケートパークが欲しい」ってコラムを書いてますのでそちらを読んでみてくださいね。まだ継続中です。最新の状況はこれから最終的な予算が付き、内容の相談に入る段階なのではっきりとした事は現時点では何も言えません。でも、皆が楽しめるパークが出来ればうれしいですね。パークが出来たとしてもそこからがまた次のステップになるんです。今度は「パークを守る」ためにはどうすればいいのかに頭を悩ませそうですね。でも楽しんじゃいますよ。

C:最近公共のパークが増える反面一般の公園で滑走禁止の看板が多く見受けられるようになりました。本間さんはどのようにお考えでしょうか?

H:公園もそうですが、基本的にはストリートスケートはイリーガルなんですよね、多分。道路交通法とかで。でも、僕が納得いかないのはどうしてもスケートボードだけが邪険にされるという事実。ローラースルーゴーゴーで始末書を書いた人はいないと思いますよ、多分。でも「ダメ」って理由がハッキリしている場合は僕は素直に移動します。僕は子供がいるんですが、子供が赤ちゃんの時に暴走族とかうるさいと腹立ちましたからね。また汗水流してやっと作り上げた会社の入り口のカーブとか、ゴリゴリに  されたら嫌なのもわかります。要はバランスや共存って事をもっと意識しないといけないのかなあ、って感じです。でも日本のスケート環境は  ホントに劣悪。環境というかスケートボード自体の認知度が低いのが残念。アメリカもパークが増えるにしたがってストリートスケートは「スケート没収の上、罰金」って所も増えてきているし、制度上そうなれば「スケーター=法を守らない悪人」ってイメージがつきやすいですよね(僕が知っている範囲では)。でもオーストラリアとかは色々な場所の公園にランプが無造作に作られていたり、迷惑をかけない限り白い目で見られることもほとんどありません(僕が動いた範囲では)。日本は罰金や禁固などは相当なことが無い限りありませんが、スケートボード自体が社会的認知が低すぎです。そのこと自体は人の  せいには出来ないし、自分たちで変えていかないといけないことなのかもしれません。ま、僕らスケーターが徐々に変えていけばいいでしょう。出来る限りのことはしていきたいですね。世の中的に「不良」のレッテルを貼られがちなスケーターですが、僕の意見ではたしかにスケーターの中には悪い奴もいます。それは否定できない。でも、学校のクラスの中にとんがった奴が一人や二人はいますよね(それがカッコイイ場合も多い)。それと同じだと思います、確率に違いはあるかもしれないけど(笑)。だから「スケーターは悪くない」とは言えませんし言いません。でも「スケートボードは悪くない」。これは胸張って言えますよ。色々と考え方もあるし、動き方もあるでしょう。最終的には楽しく滑っていてその「楽しさ」を伝えることが理解されるきっかけになるのだと思います。僕らの活動で実現しそうなスケートパークは税金で作られます。もちろん僕も納税者の一人ですが、スケートボードが嫌いな納税者もいないとは限りません。だからスケーターの諸君には「気を抜くな、ちゃんと楽しめよ」と言いたいです。別にスケートしない人に媚を売るとか、理不尽な申し出に従え、って訳ではないんです。「汝、己の欲せざらんこと、人に施すこと無かれ」です。最低限として自分が嫌な事は人にしない。また自分は嫌ではないけれど、人が嫌がる事もある、ってことを理解しようって感じです。それが「人は一人では生きていけない」って事にもつながります。また常に環境は変化していきます。今現在はすっごくスケートに厳しい所であっても、反対に自由に滑れるところであったとしても、それが永久に続くわけではないんです。おっと、ちょっと偉そうになりそうなのでこの辺で終了。
業界
C:現在の日本のスケートボード業界、環境についてどう思われますか?

H:僕は業界的にはまだまだ「駆け出し」です。とても業界全体の事や環境などを語れる立場ではないですね。でも、いくつかもブームを経て、スケートボードは確実に社会に浸透してきていると感じます。またスケートボードの楽しさは時代時代で変わりながらも本質的なところではますます進化していると感じます。理想としてはスケートボードで食っていける人が増えていって欲しい。プロライダーしかり、ショップや代理店しかり、スケートボードに関わる人が安心して生活できる環境が確立されるといいですね。ま、そうなったらそうなったで「ぬるま湯」から飛び出る人も多いと思いますが。

C:ずばりスケートボード業界は今後どうなっていくと思いますか?

H:わからない。だから恐いし楽しいの。
趣味・生活
C:本間さんの趣味は何ですか?

H:「音探し」。インチキDJ。あとスケートね。

C:休みの日は何をして過ごしていますか?

H:大抵は休みの日に原稿書いたり撮影行ったり、デモやコンテストがあったりして休みは潰れちゃうことが多いですね。そういう半仕事以外にも役所にパークの打ち合わせに行ったり、オリジナル商品の素材を探しに 行ったり結構忙しい感じですね。でも、出来るだけ家族といっしょにいたいです。一番やりたいのは子育てね。

C:よく遊ぶスケート仲間は?

H:まず慶太やヒゴビシャスはしょっちゅう誘い合ってすべりに行きますね。クマ吉や晋はなかなかタイミングが合いませんが、イベントやデモで一緒に遊ぶことが多いですね。あと新宿「エンジョイ」ローカル連。もう15年以上一緒に滑る仲間もいます。他にはショップがある浦安ローカル達、ショップに来る葛西ローカルや東大島ローカルとも滑ります。スケート以外では慶太とヒゴビシャス(笑)。結構ヒマな時はヒゴビシャスの家に行ったり飯食いに行ったりしていて、夜遊びはほとんど慶太と一緒です。慶太の友人のDJ仲間達ともよく遊びます。 やりすぎることが多いです(笑)。
読者・相談
C:コモーションに良く来る読者からの質問メールを本間さんに聞いてみたいと思います。

C:最近おじさんスケーターや親子スケーターが増える中、「こんな年齢でもできるでしょうか?」というメールが良く来るんですよ。

H:まずスケートボードに限らず全ての事も同じですが、「やりたい」と思うの  なら出来ると思います。ただ「やり方」という点や客観的に見た体力や能力ということに関しては「スケートボードができますか?」というのと  「プロライダーになれますか?」というのは違いますよね。40歳の人が初めてスケートボードに触れてプロライダーになることは確かに難しいかもしれません。 しかし、スケートボードは性別・年齢・職業などに関係なく、 誰でもいつでも始めることが出来ます。またチームスポーツと違って一人でも練習できるし、いつでもどこでも練習できる。オーリーが出来るまでは  ちょっと時間がかかるかもしれませんが、オーリーが出来れば飛躍的に成長するし、いくつになっても自分が常に成長過程にある実感が持てる楽しさがあります。頭で色々考えると臆してしまう場合もありますが、まずは自分のスケートボードを手に入れてはじめてみるのが良いと思いますよ。最近はハウツー本やビデオなどが充実しているし、様々な情報も簡単に得ることができます。昔に比べれば比較にならないくらいスケートボードを楽しみやすい環境にあると言えますね。 これから公共のスケートパークも増えるだろうし、場所的な問題も少しずつクリアされていくと思います。ただスケートボードパークの設立に関しては「子供の意見」では行政はなかなか腰を上げてはくれません。「大人」の方でスケートボードの魅力に気が付いた人は、是非キッズやローカルスケーターの事を理解し、 後ろから支援してくれる事もお願いしたいです。

C:「プロになりたい、スポンサーつけたい」  「スケートボード業界で仕事がしたい」どうすればいいんですか?ってこれも多いんですが、どうでしょうか?

H:仕事としてスケートボード業界に関わりたいのはスケーターであれば一度は考えることだと思います。まずプロライダーに関しては現在日本のAJSAのシステムではアマチュアコンテストで優勝するか年間ランキングの10位以内に入ることでAJSA認定のプロライセンスは得ることが出来ます。しかし、プロライダーとして活動していくにあたって、ライセンスの有無はそれほど重要なことではない。もしろライセンスの獲得に  躍起になるよりも着実にスケートボードのスキルを上げていくことや、 少しでも自分の実力を広い範囲で認めてもらうことの方が大切かもしれません。なぜかというと、プロライダーの収入源はスポンサーからの契約金や広告出演などのギャランティー、コンテストの賞金が  主なものであり、それはライセンスとは直接関係の無いことだからです。 現在はスケートボードを取扱う代理店の中では、スケートボードが好きな  スケーターが働いている所もあれば、ただスケートボードを「商材」の一つ としてだけ取扱う所もあります。スケートボードのことをよく分かっている代理店ではライダー担当がキチンといて、そのライダーの活動に対して  キチンと評価をしてギャランティーを決めています。 しかし、「商材」の一つとしてスケートボードを扱う業者ではライダーの活動を的確に評価・判断をする事が出来ず、ライセンスやコンテストの結果だけでライダーを評価する所もあります。資本主義マーケットにおいて僕はそれが悪いとは思いませんが、プロライダーとして生活の糧を得るには  最終的にはスケートボードの実力と「いかに人に認められるか」が全てだと思います。いくら上手くても人に評価されない(実力的にも人格的にも)のであれば、一時期自分を評価してくれる所に安息の地を見出したとしても、  コンペティターとしての寿命が尽きた時にはスケートボード業界から離れなくてはいけない運命になってしまうと考えます。色々ややこしいことを言いましたが、要は楽しく滑りつづけること、そして沢山の人に実力を認められること、が必要なんですね。でもそれが一番難しいかもしれない。そのためにはホントに沢山の方法があると思いますので、 自分が出来る方法を考えてみてください。また「業界で仕事をする」 事に関しては色々な方法があります。代理店やショップにバイトや就職することが一番安易な方法でしょう。これは自分で情報を集めて動けば実現することだと思います。しかし、僕がオススメしたいのは「新しい道」を開拓すること。例えば友人はスケートボードのビデオ製作で生活の糧を  得ようと頑張っているし、オリジナルのウェアブランドを立ち上げてそのデザインや販売で生活している人もいます。また今は日本では誰もして  いませんがライダーのマネージャーとしてや、メーカーに所属するライダーをまとめるチームマネージャーとして生活している人もアメリカにはいっぱいいます。デモやコンテストのMCとか、スケートボード専門のカメラマンとか、オリジナル商品製作とか、ホントに考えれば考えるほど仕事の種類は沢山あると思います。確かに自分で開拓していくことは安易なことではありません。生活するのも大変だろうし、苦労は尽きないと思います。でも若いうちは何でも挑戦できるし失敗してもいいでしょう。 要は「業界で働きたい」ということよりも「自分はそこで何がしたいのか」が大事だと思いますよ。憧れの代理店に入社しても長い間「出荷担当」 しかできなかったり(それも大事な仕事です)、自分が考えていた「業界の仕事」とは開きがあることも多いです。でも実際に動き始めて  色々試してみて、沢山の勉強をして、スケートボードを楽しむ。 そんな人たちが増えることによってさらに日本のスケートボード業界が  活性化し、スケートボードの可能性が広がっていくのだと思ってます。

C:「僕の住む町はできる場所がないのでパークを作ってください」 そんな無茶な、、、という感じですが、パーク署名成功者の本間さんのご意見は?

H:確かに無茶ですね(笑)。考え方を変えたほうがいいでしょう。そういう方に聞いてみたいのは「カーブボックス作ったことある?」ってことですかね。 コンパネやL字鋼ですぐに作れるんですよ、ボックスは。作るのも簡単だしね。僕は拾った材料でボックスやバンクを作ったこと何度もありますよ。 経費ゼロ。ちょっと考えれば出来ることなのに、最近はセクションを  作る人自体がほとんどいない。昔話をする気はありませんが、今のプロライダー達は絶対に一度はセクションを作ったことあると思いますよ。 中にはミニランプやバンクtoバンク、その他色々なセクションを作ってパークにしちゃった人もいます。でも、置き場所は高速道路の下とか公園の片隅とか、イリーガルな場所が多かったため、行政から「撤去命令」が出て終わり。ぶっ壊されてトラックで撤去されたパターンがほとんどです。でも、決してその活動は無駄にはなっていません。セクションを作ったことが  きっかけとなり「なぜダメなのか」を行政ととことん話し合ったり、 「じゃあ、滑れる場所はどこなのか」を追求したり出来るし、 「スケートボードを楽しみたい人が沢山いるのに場所がない」って事は  しっかりとアピールできたはずです。 僕が言いたいのは「自分が動く」と言う事。年齢が若いうちは行政はなかなか耳を傾けてはくれません。公共パークを作るのに使う経費は税金です。「公共」って意味自体が  「皆のために」って事ですから、「スケートボードを楽しむ人だけのために」 って事ではないんですね。その辺をよく理解することがまず第一歩ですよ。スケートボードを楽しむ人がパークを使うことによって騒音や器物破損に悩む人も減る。スケートボードに理解を示すことによって行政の柔軟な姿勢や、 「ひきこもり」世代の青少年コミュニティーの活性化を図れる、そんな側面もパークの設置には関わってきます。自分の要求だけしているようでは相手はなかなか動いてはくれません。上記のような色々な側面を冷静に見極めて、正しい方法で請求すれば絶対に話は聞いてくれると思いますよ。  実際にパークが出来るかどうかはそれぞれの行政で考え方が違うのでなんとも言えませんが、何かをしなければ何も起こらない。それだけは確かです。 浦安市の場合はまだパークが出来てはいませんが、「スケートボードを楽しみたい」というローカルらの要望を僕が「どのように理解してもらうか」を考えて動いた結果がこれから出ます。細かい流れはCOMMOTIONの「スケートパークが欲しい」を読んでみてください。ただ「パークが出来ればそれでいい」という訳でもなく、僕の場合はすこしでも多くの人にスケートボードの楽しさを知って  もらいたいし、僕が知っているスケートボードの楽しさを伝えたい。その一部分としてパークが出来ればいいと思って活動していました。「僕は子供だから何も出来ない」、「僕だけ動いても何にもならない」って考えたらそれで終わりです。「何をどうすればいいのかわからない」という人が一番多いと思いますが、そういう人は「何をどうすればいいのか」をまず調べてみることから始めてみて、一人の力は微々たる物でも理解してくれる人の輪を広げて色々な人から知恵と応援をもらいながら動いていけば状況は  変わっていくはずです。多分ね。
人生
C:今までスケートボードをやってきて最高の思い出は?

H:年齢・性別・職業など関係なく沢山のカッコイイ奴ら(上手い奴らじゃないよ)に出会ったことですね。間違いない。  今も「出会い」は続いてますよ。

C:本間さんの人生の中でスケートボードとは?

H:確実に「大切な物ベスト10」には入りますね。  それ以上でもそれ以下でもない。

C:最後に一言。

H:沢山偉そうなことを言いましたが、僕の考え方が全てではないし、正しいかどうかもわかりません。スケートボードの楽しさが人によって違うように色々な考え方があっていいと思ってます。スケートボードにはそれだけの「懐の深さ」があると思います。


COMMOTION SKATEBOARD